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(知らなかった…)
自分の娘が、そんな将来を
描いていたことを
この時、かず子は初めて知った。
(あの子…よう言い出さんと…)
いつも父・亮二の意見を尊重し、
夕餉の菜も自分の好みなど
一つも言わないたま子を、
かず子は改めて不憫に思った。
と、同時に
(それで毎晩、あんなに
勉強をして……)
我が子を贔屓目にしては
ならないけれど
母親のかず子からみても
たま子の成績は群を抜いていた。
近隣の大学なら明日受けても
落ちることはないだろうと。
ならば、たま子の意思を
きちんと聞いて
本人の納得のいく進路を
選ばせなければ
(死んだ“あのひと”に
申し訳がたたない)
かず子は強く思った。
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