冬 の 影

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少しずつ自分の“影”が 懐かしき人々を 霞め始めていることなど 知る由もない春紀は、 建築部の柱として 多忙な日々を送っていた。 昭和三十年代は 「日を追うごとに  仕事量が増す」 同僚の伊波正も 西に東にと多忙を極めていた。 もっとも… 「毎日子供のオシメや  グズりに頑張ってくれてる  ワイフ達に比べたら  楽なもんだけど」 二人は心優しき家庭人としても 日々懸命に暮らしているのだった。 「父さん、駅まで  一緒に行こうよ」   時計は朝の七時になったばかり。 靴を履こうとした 春紀の後ろへきた樹。 「もう出るのか?」 「朝の図書室で先生が  特講をしてくれるんだ」
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