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父・亮輔の発言に
亮二は戸惑いと疑惑を拡げた。
他人の噂にあった
“兄と瓜二つ”の男について
次の情報を耳にしていたからだ。
たまに取引のある
芝山建設には
“シベリア抑留兵”
が、多く勤めていると。しかも
(帰る家を無くした人々…
帰る家を?無くした…)
この噂に、亮二は己が罪を
当てはめてみると…みると
…背に汗が走った。
そして、昨日、目にした記事…
隣町の出入り先、
応接室にあった雑誌の
【 和建築の新鋭 】
と、見出しの付いた頁には
その建築家の後ろ姿が、
小さく写っていた。
帰りに同じ雑誌を買い求め、
コッソリと自室にて
拡大鏡を手にして
何度も何度も目を凝らした。
(右へやや傾く頭…
それを支える首筋から肩…)
若い日の兄が…
亮二の瞼に浮かんだ。
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