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久々の一家団欒の夜、
子供達が二階で寝ついてから
「虎屋の羊羹を切りました」
志保が温めの茶を淹れた。
「いつ食べても
品の良いお味やわ」
「そうやなあ」
顔を見合わせる両親を
春紀は改めて見つめた。
一本すらも黒が残らぬ
晩冬の髪の亮輔、そして
また一回り小さくなった
母・衣玖の背中。
月日の重さを感じながら
茶を啜る春紀に
「そうか…樹も京大を
受験するのか…」
亮輔がそう言った。
「“も”?」
「ああ、たま子は京大の
薬学部を受ける。
“調香師”とかいう
職業に就きたいと」
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