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「そうですか…
やはり調香師……」
クンと鼻を尖らせて
寺の中を嗅ぎ回っていた、
あの幼い日の…
あの刹那い日の…
たま子が脳裏を掠めて
春紀は目頭が熱くなった。
「随分金もかかると
思いますが…」
「何を言うんや、たま子は
大事なお前の娘、
ワシらの孫娘やないか。
それに、志保さん、
樹の学費も心配なんぞ
ひとっつもないのや」
「本当ですよ!今回は
その話もあったんで
年寄りが東京までノコノコ
来たんですわ。もっとも
紀子と和歌の顔も見たい
一心もでしたけど」
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