序章  帰 還

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紀州の故郷は葛城の麓、 代々林業を営んできた。 (惣領息子の俺がおらんで  大丈夫やったんやろか?  家の者はみな、無事なんか?) あれこれ考えるうちに ようやく村が見えてきて 小高いところに建つ寺まできた。 (気持ちを落ち着けに  参っていくか・・・) 石段を登る・・・。 (かず子と待ち合わせに  使うてた場所や・・・) いつも早めにきた俺は 息を切らせて石段を駆けてくる 惚れた女の笑顔を見るのが とても好きやった。 登ったら本堂が迎えてくれた。 (無事を、ありがとうございました) 丁寧に頭を下げて (和尚に挨拶はまたにするか、  とにかく家へ・・・) また階段を降りようとしたとき、 愛しい妻の、かず子の、 七年ぶりの妻の姿が・・・! 「か、かずっ!!っ?!」 駆け降りようとする肩を しっかと止められた!
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