五分咲きの桜

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しかし、志保の服装には 芝山夫人・蓉子の考えがあった。  「今回注文の住宅は   面積以上に設えが最高級。   必ずいろんな人が見学に   やってくるはずでしょ?   当然、会社経営者とか…。   これからは女子社員も   増えるから統一された服が    必要になってくるに決まってる。   それを作る会社を始めようかと」 芝山以上の知恵者である。 女子寮には一人、戦災で 脚の自由を失った若い娘がいた。 戦前は“お針子”をしていたらしい。 女子寮の女達の服はむろん 子供達の服も彼女が考案し、 数人の女達で縫製、特に 蓉子の外出着は華やかで 服装に無頓着な春紀達でも 目を見張るものが多かった。 贅沢などしない蓉子が 外出着に構う理由も商才の成すところ。  『どこで仕立てたの?   私も欲しい!』 パーティーなどでそんな客を 拾ってくることで 女子寮の女達の仕事を 作っていたのである。
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