五分咲きの桜

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その峰が続く紀伊山地の麓、 かず子は第二子との体調も順調に たま子と長男の成長を慶びに 毎日を過ごしていた。 「たま子がもうちょっと  もうちょっと言うもんやから  半ばまで飾ってしもうたわ」 先祖伝来の雛壇の片付けを しぶしぶするたま子を 笑いながら、かず子は 初めてこれを飾った日の 亮一の笑顔を思い出していた。 あの時も  『仕舞う必要はない。   嫁にはやらん!   婿養子を取るんやから』 亮一はそう言いながら たま子を膝から下ろさなかった。 0181e214-dcbc-4df7-9128-8584134bad9d (あの亮一の愛情を…  たま子が忘れられる  ことなど…出来はしない) 今年のひな祭りの菓子も “お供え”に行ったたま子を かず子は…やはり承知していた。
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