五分咲きの桜

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女子寮へ志保を送ると 玄関では樹が大きく手を振って 待ってくれていた。 暖かな灯火を背に 自室へ戻るまでの数分… 知らずと鼻歌の出る春紀。 そんな春紀を部屋の前で 小包が出迎えてくれた…。 いつもの“供え物”。  (死んだ俺…   生きてる俺…) 春紀の心は揺れていた。 それは皆も同様らしい。 娯楽室へ入ると 正など数名が酒盛りで  「故郷から餅がきたんだ、   かと言って帰れる家も   なくなってんだけど」 そう言う一人が 火鉢で餅を転がしていた。 シベリアから帰還したものの、 とうに死んでいた両親に代わり、 伯母が餅を送ってくれたのだという。
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