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横にいる正にしても
大阪の茜に心を移しながらも
“戦後”に踏み出せないまま…。
遊びにきていた克也にしても
好きな寛子はなかなか
心を開いてくれる気配はない。
「マッカーサーは簡単に
来たけれど、心はついてけない」
冗談で笑うこの連中を
決して笑えないのが春紀なのだ。
娯楽室の片隅に身体をやって
庭先の桜に目をやると
盛りを待ち構える五分咲きの花。
(東京でも桜は咲くんだ…)
当たり前のことを今更に思う春紀を
笑っているような花びらだった。
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