夏  嵐

4/15
前へ
/315ページ
次へ
そしてまた朝になり 日常が始まる。 足早に駅へ向かう勤め人に 混じりながら、春紀も 志保と改札口へ。 「朝からごくろーなこったあ」 「真似できねーや」 ワザと人目をひくような 狂声をあげて三人の若者が 植え込みに腰掛け、 勤め人達をニヤニヤ見ていた。 (奴らか…女性に嫌がらせをしたり  年寄り子供を小突いたりする  噂の連中は…) 春紀は自分の身体を盾にして 志保が彼等の視界に 入らないように改札へ入った。 ホームへ上がると彼等の話題… 「盗みをして遊び暮らしてる」 「親が金だけ与えて放ってる」 「まだ十五くらいらしい」 知ったような、知らないような話。 「二人で帰れる日や車の日は  大丈夫だけれど…とにかく  独りの日は気をつけなさい」 繰り返しになるが 春紀は志保に念を押しを…。 「はい」 返事して微笑む志保が 眩しいのは朝日のせい… ばかりでないことを… 春紀は自覚していた。  
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加