夏  嵐

7/15
前へ
/315ページ
次へ
資材調達のため、 春紀が北関東への出張へ 入ったのは八月末だった。 (山間(やまあい)はかなり  暑いんだなあ) 気候穏やかな紀州育ちの春紀には いささか蒸し風呂のような 坂東も山の麓の町。 かといって… (夜には冷え込むんだ…) 気候の妙に出遭い、ふと… (シベリアも不可思議な処だった) もっとも、寒さばかりが 記憶にこびりついて 夏の白い花を思い出そうとも 記憶は曖昧になっていた。 「ここは春先には  カタクリが咲きます」 地元の社員が教えてくれたカタクリ。 その花を描いて貰った紙に 志保への手紙を……  『いつかあなたと見に来たい』 6546a775-7c4e-4c73-8564-2b45b28d1367 書こうか…書くまいか…… 思案の旅の宿には せっかちな秋の虫が… ・・・・・鳴いていた。
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加