夏  嵐

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翌日は山野を歩き クタクタで就寝、また移動と 木材の買付けに明け暮れる日々。 こっそりと志保が用意してくれた 着替えもとうとう底をつき… 自分で洗濯する始末。 「やっぱり嫁は欲しいなあ」 一緒に行った同僚が一言、 「ああ、貰え!貰え!  俺みたいに便利で不自由になれ!」 既婚の先輩が、酔った弾みで本音。 確かに結婚には若干の拘束はある。 幸福な結婚生活のときには 不自由なんて思うこともあったが、 こうして世間にたった独りで 放り出されると、 (そんな不自由は爪の先ほどのこと) “孤独”のほうが 春紀には厳しかった。 さりとて、どんな相手でもよいと いうものでもない…。 そんなときに知り合った志保だ。 (彼女は…どう思ってくれてるのか?) 春紀の心は、(とお)程も、 若い気分になっていた。
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