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『足利銘仙という織物だそうです。
色が美しいので一反…
なんと書けばよいのかな…。
着ているあなたが見たいです』
可愛い花が描かれた紙に
朴訥な人からの優しい手紙。
志保はそっと胸に抱いた。
十六で駆け落ちした夫と
死別して長いの月日が経っていた。
山持ち庄屋の息子だった夫は
身代も親も棄て、自分を
選んでくれた男だというのに。
「…赦してください」
箪笥の上の夫の写真に
手を合わせ…
志保は、春紀に傾いている心を
はっきりと確信した。
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