夏  嵐

9/15
前へ
/315ページ
次へ
 『足利銘仙という織物だそうです。   色が美しいので一反…   なんと書けばよいのかな…。   着ているあなたが見たいです』 可愛い花が描かれた紙に 朴訥な人からの優しい手紙。 志保はそっと胸に抱いた。 十六で駆け落ちした夫と 死別して長いの月日が経っていた。 山持ち庄屋の息子だった夫は 身代も親も棄て、自分を 選んでくれた男だというのに。 「…赦してください」 箪笥の上の夫の写真に 手を合わせ… 志保は、春紀に傾いている心を はっきりと確信した。 e678cd88-43df-40c4-84e0-5d78850d0984
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加