夏  嵐

10/15
前へ
/315ページ
次へ
「やれやれかあ、ごくろうさん」 出張仲間と上野駅のホームで 解散してすぐ 「帰りかい?」 正に声をかけられた春紀は 遠くの方に茜の姿を認めた。 「来てたのかい?彼女」 「うん…三日程遊んでった」 交際は順調のようだが 正から“結婚”の文字は出ない。 電車の中で互いの仕事の 進捗状況なんぞをな話してるうちに 代々木上原、改札口を出て 真正面にある克也の店を見ると 「巧くいった!歩かずにすむ」 車を出そうとしている克也を 正が指した。 「配達かい?」 「いえ、葛城さん、今、寛子ちゃんと  樹くんが買い物に来てたんですが  二人で帰ってしまったんです。  俺、『送る』って言ったのに」 空を見るとまだ明るいが、 「だな…タチの良くない連中が  ウロウロしてるからな、最近。  俺は先に二人の通り道を行くから  正と追いかけてきてくれ」 何やら嫌な感触がして 春紀は道を急いだ。
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加