夏  嵐

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「やっぱり!」 大通りから追いついた正と克也。 それを見た三人が怯んだ隙に 樹が寛子の手をひいて立ち上がった。 「樹、大きな声で近所に  叫んで回って警察を呼べ!」 「わかった!」 春紀に頷いた樹が走り去ると 寛子を克也が抱きとめた。 「怪我?!」 「私は大丈夫です。でも樹ちゃんが  ひどい目に…」 「大丈夫さ、でもお返しは  してやらないとなあ、春さん」 「そうとも!こんな働きもにしない  蛆虫野郎にヤラれっ放しはな!」 正と春紀に殺気を感じて 怖じ気ずくも不良なりに 「へん!年寄りなんか」 引っ込みはつかない様子。 減らず口で一人が正に組みかかる。 「舐めんなよ、シベリア帰りを!」 組まれた瞬間に正は 地面に男を投げつけて 「あの湿気たシベリアの丸太に  比べたら、人間なんて軽い軽い」 正の言葉に春紀は少しばかり 笑いも浮かんでしまった。 「そうだな、あれに比べたら…」 シャツの汚れもお構いなしに 戦闘開始になって暫く… 「くそったれ!!」 一人が取り出したのはナイフ。
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