夏  嵐

13/15
前へ
/315ページ
次へ
(まずいか…) 春紀が気合いを入れ直した時、 「キタぞーーーー!」 樹に呼ばれた寮の連中が 続々とやってきた。 「ナイフなんか出しやがって、  戦争知らずが」 「ふざけて生きてんじゃねーぞ」 屈強な男達に囲まれて 「そこの“戦争帰りの親父集団”だろ?  辛気臭い死に損ない!」 「生き損ないがデカイ口叩くな!」 罵声と拳が炸裂した。 所詮若者達が、“死に場”を 経験した人間の気迫には敵うはずもない。   使い方も判らぬナイフは 宙を舞ってしまうだけ。 あとは転がるボールのように 春紀達の間を突進しては 突き転がされるの繰り返し。 そして、ホイッスルが聞こえると 警官が数名やって来て 「そこまで!そこまで!  暴力はいけません」 温厚そうな警官が間に入った。 「やっとシッポを掴んだ。  苦情が多くて難儀してました」 その警官の支持で三人は 数人の警官に取り押さえられた。  が、いつの間にか 寛子の被り物が外れてしまい、 火傷でやや膨らんだ右頬が 一人の不良の目に入った。
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加