春を待つ日々

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春を待つ日々

“塞翁が馬”となった 不良達との乱闘事件は 寛子と克也の結婚話を纏め上げ、 寮にも一段と活気を生んだ。 人間とは影響され易い生き物、 “嫁を迎える”気になった男も増えた。  「理想的なアパートメントを   造りたいわ!」 常に斬新を追う芝山夫人・蓉子は 新たな世帯持ち社宅の図面を 毎日熱心に女達と見ていた。  「ずっと家にいるのは主婦、   主婦目線の造りでなきゃ   注文だって入らないわ」 様々な意見が出ても 志保は皆に茶を配り ニコニコ眺めるだけ… の、様子を春紀は、 「君は?何か要望はないの?」 さり気なく尋ねると 「…戴いたお着物を  仕舞える引き出しが  少しあれば…私は充分」 春紀の送って足利銘仙を 指していると気づいた春紀は 「そうか!そういう物…!」 閃くところがあった。  
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