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「これ…」
春紀はポケットから
柿の実をあしらった
手彫りのブローチを差し出した。
「さっき事務所で慌てて
ピンをつけたのだけれど」
「可愛い…」
白いブラウスの胸元に
志保はすぐに取り付けて
「大切に致します」
微笑んだ。
「故郷は柿の木がたくさんでね、
今頃は収穫の準備だろう」
自分の言葉に春紀は
ふいと寂しくなるけれど
目の前には志保がいる。
「こんな大きな家は無理だろうが
いつか必ず、君と樹を、僕が
設計した家に住まわせてみせるよ」
「ありがとうございます。
有り難いけど、私はあなたが
元気で隣にいて下さるだけで…
それだけで幸せなんです」
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