慕   情

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近藤が門で会った娘は 浜屋百合香(はまやゆりか)、二十歳。 以前、樹と寛子の事件で 知り合った警官・浜屋の 娘・百合香(ゆりか)が、縫製工場で 働き始めてから往来があった。 そして、この春、芝山が 新しく立ち上げた警備会社の中核に、 芝山から乞われた浜屋は 警察を辞職して、妻と娘と三人、 春紀達と同じ社宅に住むように。 気立て良い百合香は、 誰に言われるでもなく 社宅の周囲をいつも掃除して 皆に重宝されていた。 この日も、仕事を終えてから 庭掃除に精を出していたのだった。 (あの人が…樹君を奪いに?) 樹の祖母と近藤弁護士の登場は、 屋敷内の誰も知っていた。  「冷酷そうな男が代理人」 母親達がそう噂する近藤であったが、 今、目の前にした百合香は af7c5ec8-ad0b-4e05-9a44-b2505bbe275d 端麗な姿と (私の傷に顔色一つ変えず…) 近藤の咄嗟の気遣いに 悪い印象は持てなかった。
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