雨の日にバグる国

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 とある家にて。  三十歳くらいの女性が、キッチンでカレーを作っている。 「わぁ、カレーの匂いがするー!」  リビングでテレビゲームをしながら、好物のカレーの匂いを嗅いで喜ぶ十歳くらいの少年。この女性の息子である。 「待ってなさい。もうすぐできるから」  少年の母親がそう言った直後。  この部屋は突然姿を変えた。  内装が完全に切り替わり、まるで研究室のような部屋になっていたのだ。 「よし、できた!」  と、母親は目の前にある完成した物体を見て声を上げた。 「やっとできたんだね!」  息子は完成した物を見ては目を輝かせる。  母親が完成させた物。それは、カレーではなく、 「うん! 愛情たっぷりのタイムマシンよ!」  タイムマシンであった。科学者でも何でもない平凡な主婦が、タイムマシンをカレーを作る感覚で、いとも簡単に完成させてしまったのである。  おわかりいただけただろうか。  この親子に起こった可笑しな現象を。  カレーを作っていたはずが、いつの間にかタイムマシンを作っていたことになっていたのである。目的が突然変化してしまったのだ。  そう。この可笑しな現象こそ、この国の雨の日に起きるバグなのである。  国民はこのバグを何故か認識することが出来ない。この可笑しな現象に、ツッコミを入れることすら出来ないのだ。
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