雨の日にバグる国

4/7
前へ
/7ページ
次へ
 では、次のシーンをご覧いただこう。  ここは、中学校の教室。放課後。  教室の真ん中らへんで、男子と女子が二人で向き合って立っている。  この二人以外の生徒達は、部活やら何やらでもういない。 「話って?」  女子がそう聞くと、男子が顔を赤らめながら口を開いた。 「あ、あの、お、俺、前から、アイリスのことがす、好きだったんだ。お、俺と、つ、付き合って欲しいんだ」  その告白に、女子は少し間をおいて答えた。 「……ごめんなさい。私は他に好きな人がいるの。だから、アンドリュー君とは付き合え……え!? 本当に!? 私のこと好きだったの!? うん。私も好きだったんだ! よろしくお願いします!」 「や、やったあ! マジで!? 俺と付き合ってくれるの!? ……ごめんなさい。俺、他に好きな人がいるから君とは付き合うことができない」 「そ、そうなんだ。わかった……」  そう言って女子は涙を浮かべながら、その場を走り去って行った。  おわかりいただけただろうか。  この二人に起きた可笑しな現象を。  まず、男子が女子に告白をした。そこは特に可笑しくはない。だが、次が可笑しいのだ。  男子の告白に対し、女子はフったはずが突然気持ちが切り替わりOKしてしまう。それに対し男子は喜ぶ。  しかし、次の瞬間。何故か男子は女子をフってしまう。女子はショックを受けてその場から走り去ってしまい、あたかも女子が告白したかのようになっていたのだ。  これも雨の日に起きるバグなのである。  人の心が変わってしまう事があるのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加