砂時計・上↓

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砂時計・上↓

人は死ぬとき、最期になにをおもうのだろう。 ある町の七不思議に『砂時計』というものがある。その砂時計は、触れた者の命を喰らい、残った体を遺灰として上部から下部へ流し落とすのだという。 上部は現世の世界、下部は死後の世界である。 上部から下部へ流れ落ちる瞬間、それは人が死ぬ瞬間である。 砂時計の境を通過する瞬間、人は夢を見るのだという。永遠に終わることのない夢を、見るのだという。それがどのような夢かは、見た者にしかわからないのだが。 今宵は満月である。 池にうつる満月がとても美しい。 それも、池に沈む件の砂時計が姿を現しそうなほどに。 砂時計の中の砂が落ちていく。 さらさら流れる砂時計。 今宵の砂時計の中で雨のように流れ落ちる砂は、誰のものであろうか。 もしも月の光が真実を写すのだとしたら、誰かの最期の夢が見えてしまいそうである。 これは、いつかのどこかの誰かの夢の話である。 砂時計に突っかかる「眠りウサギ」と呼ばれる少年が見た、夢の話である。
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