Prologue

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Prologue

この世には孤児がいる。何らかの理由で、親と離れ離れになってしまった孤児が。そんな孤児の居場所が、孤児院である。 この春25歳になった男、浅倉(あさくら) (あや)()は、孤児院出身だ。物心がついて間もない頃両親を亡くし、親戚は絢人の面倒を見られなかった為、孤児院に引き取られた。 絢人は大学と孤児院生活を卒業すると、社会人として会社で働き出した。だが、自分の理想の未来とは何かが違う。自分が育った孤児院に、恩返しがしたい。絢人はそう決意して、孤児院で働くことを決めた。 再び孤児院に戻って来た絢人は、長い間面倒を見てくれた老人にこう言われた。 「そのようなことは、考えなくて良い。恩返ししたい気持ちはわかるが、自分の好きなことに没頭すれば良い。お前はこの孤児院を卒業した。情けは要らん」と。 追い出されるようにして育った孤児院を後にした絢人は、寂しさを覚えながらも他の孤児院で働くことにした。人手が足りない孤児院なら、沢山ある。あの老人の言葉は、「この孤児院は人手が足りているから、他をあたれ」という意味でもあったのだろう。 そうして絢人がやって来たのは、夜でも灯りが絶えない都会の町。その端っこにぽつんとある、木造の質素な孤児院である。
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