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赤い傘が見えなくなると、僕は白いコーヒーカップに手を伸ばし、琥珀色のコーヒーをすすった。
今日は念願のホットコーヒーだったが、少し冷めたせいで味の輪郭がはっきりわかる。胸に広がる強い苦味は、コーヒーのせいか。
バカだな俺。彼女を慰めて親しくなったりできただろうに。
口の端からふふっと笑いがもれる。
その後しばらく喫茶店に通ったが、ミウさんと会うことはなかった。
僕はサイフォンで淹れるコーヒーが好きになり、今でもたまにそこを訪れ、マスターに豆の特徴などを教えてもらっている。
ミウさん、彼氏と上手くいっていればいいのだけど。
明るい陽射しの日が増えてきた。
梅雨もそろそろ明ける。
でも僕の心の中で、
いまだに静かに降り続いている、
美しい雨。
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