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Raindrop
目が覚めるといつも泣いていた。
悲しい夢? 辛い夢? 思い出せない。
涙は心のデトックスとは言うけれど。
胸がズキズキ痛い。
───ああ、そうだ。私また……振られたんだ。
何も上手く立ち行かない。
いい感じではあったの。
相手は近所のカフェのバイトリーダーで。
お客と店員の関係からは脱却できた。
仕事のときのような物腰の柔らかさを感じない、ワイルドな感じにもドキドキした。
ちょっと言い方はきついけれど、時折見せる優しい言葉に夢中になっていった。
私はまだ、決定打となる言葉を言わずに一緒にいることがどういうことが分かっていなかったんだ。
彼女気取りで店の前で待つ私はさぞ滑稽だっただろうね。
彼は相手をしてくれていただけだったんだ。
1ヶ月ちょっと。
返事が無いわけじゃないよ。
だけど、淡白になってゆく。
ハッキリと言ってくれないから不安だけが募る。
一言の優しい言葉で、一瞬の仮初の安らぎを与えていく。
違和感を感じ始めたのはいつだったか。
会えないと落ち着かなくて、返事がないと落ち着かなくて。
安定剤という名の麻薬になっていく。
執着なのか、依存なのか、区別がつかない。
私は意識とは裏腹に涙が止まらないことが増えた。
淋しくて泣いているのだと思った。
心が泣いているから外に溢れたんだと。
何度となく繰り返す恋愛。
お互い自由過ぎて気持ちがなくなる。
依存や束縛をされるか、するか。
人形扱い。略奪される。
ろくな恋愛をしていない。
恋愛なんて一瞬のトキメキが点滅を起こしているだけ。
永遠なんてないの。
ずっと同じひとを好きでいる自信もない。
淋しさの一時しのぎをしているだけ。
愛しつづけることが無理なら、愛され続けることも無理だ。
おなじことを繰り返すのも飽きてしまうから。
私ほど醜い人間もいないと思う。
けれど、誰かにそばにいて欲しかった。
人が怖いけど、人が好きだから。
眠れる場所がほしかった。
大丈夫だよと撫でてくれる優しい手がほしかった。
願っても手に入らないものだけれども。
多くの人には簡単に手に入るもの。
私には難しいもの。
だって、怖くて触れないから。
ねぇ、その手で撫でて欲しかった。
言えない言葉は喉まで出かかって、飲み込む。
何度も何度も繰り返した。
何も隠してないし、嘘もついていない。
比喩が伝わらず、ストレートには伝えるわけに行かない。
気を使えば使うほど空廻る。
無頓着な馬鹿を演じればよかったのだろうか。
うっかり日課になっていたカフェの近くに来てしまう。
いつも私が立っていた場所には他の女性がいた。
あの人は───私にも優しいサブリーダー、だったかな。
出てきた彼と楽しそうに出ていく姿ををただ見つめていた。
これは未練ではなく、「またダメだった」という後悔。
そう思い込もうとしている時点でダメだと知っている。
終わりだと思うまでは一途に想う。
終わりだと伝えられるまでは一途に想う。
終わったら深追いしない。
傍から見たら拍子抜けなほどに。
だって、嫌だって叫んだって変わらないじゃない。
だったらこれ以上醜い姿を晒さない方がいい。
内情なんて相手にはもう関係ないのだから。一緒にいたら「1番近い他人」で、離れたら「知らない人」になる。
友だちに戻れる人は最初から恋愛じゃなかったのよ。
だから、さよならをしなきゃいけないの。
全部忘れられたらいいのに、全部覚えてる。
嫌なことも楽しかったことも。
相手が無理って時は私が隠していた我慢が溢れた時。
溢れたら修復できない。
「1人に戻るしかない」
それしか選択肢が思いつかなくて。
結果論で言えば───『恋愛しなきゃいい』。
簡単で難しい選択。
人と関わらなければ傷つくこともない。
そんなことはわかってる、わかってるけど。
『やっぱり人が好きだから』
馬鹿な私はこれからも自ら飛び込む。
密かに『今度こそ幸せになれますように』と。
ねぇ、願っているのになんで視界がまたぼやけるのかな。
心が雨漏りしているね。
私の心は、晴れることのないやまない雨が降り続けてる。
涙が止まらない。涙腺というダムも決壊してる。
頭を撫でてくれたら止まるのに、撫でて欲しい人はもういない。
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