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夫はすこしぎこちない笑みを浮かべて、触ってもいい?と言われて、ぎゅっと抱きしめてきた。
おかえり
絞るような声だった。
その瞬間、私はやっと胸の中にかかっていたモヤが取れた気がした。
雲の上にいるような感覚が、少しづつ地に足をつけたような。そんな気持ちになった。
いつも熱いくらいの腕は、冷たくて、寒かったのか。なんて思いながら、私は素っ気なく、そしてぎこちなく笑った。
ただいま。
そう返せれば良かったけど、私は言えなかった。
まだ許せないし、再構築するつもりで戻ってきたけれど、貴方にはもっともっと苦しんでほしい。
そんな気持ちが溢れてやまないの。
そう伝えたけれど、彼は静かに言った。
「俺がした過ちは消えないし、ねねがそう思っても仕方ない。
信頼を取り戻すには時間かかるかもしれないけど、それでも一緒にいてくれると言ってくれたのが嬉しいんだ」
私が戻ってきて嬉しいという表現は、その時の私にしてみれば、甘ったれるな。が、感想だった。
それと同時に、ちょっと嬉しい気持ちもあった。
あんなに無視し続けた夫なのに、こうして私と話してくへてるのが凄く嬉しいと感じている。
夜の営みだけしか見てくれなかった夫。
最低。気持ち悪い。ムカつく。クソ夫。ゴミ。
耳が腐るようなことばかり脳内で吐き捨てたのに、私はどうも夫を嫌いになれなかったのだ。
だから、嫌われる努力をしてみた。
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