はじまる謎の共同生活

5/13
342人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
「美麗さんはいないんですか?」 酒に酔ってなかったら聞けてなかっただろうけど、酔いに任せて僕もそう聞いてみた。男の影はないけど、元同居人といったらたぶん男だろう。それくらいは僕にも想像できたし、何があったか聞かない方がいい気もしたけど、でも僕はとにかく気持ちよく酔っぱらっていた。 「うん、いないよ。」 でもそんな雰囲気に流されることなく答えた美麗さんは、そのまま皿を片付けて洗おうとした。僕はそれを必死で止めてなんとかそれを洗い始めた。僕の必死な様子を見た美麗さんはクスっと笑って「おやすみ」と言って、部屋に入っていってしまった。 皿洗いを終えて、僕は新しい自分の部屋に入った。 8畳ほどあるその部屋の片隅には、新調したパソコンを設置して、窓際には今まで使っていたベッドを置いた。 それでも部屋のスペースには十分余裕があったし、白でまとめられた部屋の雰囲気にはどこか清潔感があって、実はとても気に入っていた。パソコンのスペースは同じ部屋だけど少し仕切りが出来るように家具を置いて、生活スペースと仕事スペースを分けることにした。 デザイナーの僕の好みが詰まった、生活も仕事もしやすい部屋が出来上がったと思う。 「はあ。」 この2か月くらい、本当に色々な事があった。 色々な事があった末に、僕は今年上の女性と同居している。意味の分からない状況なのは確かだけど、でもこれから本腰を入れて仕事を頑張っていかなければ。 そう思うと酒に酔っていた頭もすっきりして、僕はそのままさっそくフリーランスになって初めて頼まれた仕事に取り掛かることにした。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!