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朝起きると予定通り、なおからメールが届いた。
『今日家に来れる?』
そして僕はそっけなく、夕方に向かうと返信をする。本日計画は実行される。本当は部屋を片付けたりしたいが、いつもの通りの姿で残しておく。
タクシーを呼んで、少し早めに屋敷に着くとなおは犬を埋めたあたりで僕を待っていた。傘をさして立つ姿は今から人を殺すようには見えなかった。
「今日は顔色が悪いのね」
「こう見えて僕は病人だからね」
「それもそうね。さぁ、最期に一杯だけ紅茶を飲みましょう」
相も変わらず雨は降っていた。振り続けた雨でできた水たまりは、茶色く濁っている。雨の音も土のにおいも、湿った空気もこのビニール傘も僕はもう二度と感じることはできない。
なんとなく感じた眩暈も今日はなんだか生きている証のようだった。
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