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「私が怖くないの」
紅茶に角砂糖をいれながら、彼女はそう聞いた。普段砂糖なんかいれないくせに。
「怖くはないかな。ただ一つ思うのは、君にもう少し早く会いたかったかもしれない」
「どうして」
「僕が病気になる前に、君が愛に飢える前に。そうすればもう少し幸せになれたんじゃないかな」
俯いた彼女から雫が落ちる。泣いているのは分かっている。僕はその雫を拾ってあげることが出来なかった。
「あなたはどのみち死んでしまうのでしょう。ならこれが、私にとってハッピーエンドなんだわ」
「君と僕のハッピーエンドだ。そうだろう?」
僕はティーカップに口をつける。毒が入っていることを知っていて僕は飲んだ。
制止しようとして僕の名前を叫ぶ彼女。この時僕は幸せで、確かに彼女を愛していたのだろう。
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