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「それにしても、その腕はどこで覚えたんだよ? 今までの護衛ん中じゃ、お前が一番強い。しかもずば抜けて」
「それはどうも。師が良かったんだよ。仲間も強かった。謙遜でなく、俺より強いのなんかごろごろしてたんだ」
「へええええ」
感心しながら、マルヴィンは今し方の小競り合いで緩くなった荷物の紐を括りなおし、中の荷を整えた。
集団による襲撃を、ハーシェルはいつも、こともなげに片付ける。しかも今回は、今までで一番数も多かった、それにもかかわらず、だ。
被害は多少荷が崩れた程度。それも中身に被害はなかった。マルヴィンにしてみれば、これは驚嘆に値する。
一方のハーシェルにしてみれば、幼い頃から世界の一柱であるセルシアを守る騎士団に出入りして鍛えた腕だ。痛め付けられるに近い対複数戦の訓練も受けた身としては、あまり無様な負け方はしたくない意地がある。幸いこの旅に出てからは、手応えに感じられるほど強い者には遭遇しなかった。
「今ので喉渇いたろ? ほら」
荷台に乗り込んだハーシェルに、ふくよかな女が飲み物を差し出す。それをお礼ついでに笑顔で受け取り、一気に飲み干した。
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