Ⅰ 旅立ち

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 レジエントまではもうすぐで、ハーシェルはいささかのんびりとした気分で旅を満喫していた。  王宮では、同じ年頃の貴族とは仲良くしていた。中でも特に気が合ったのは、セルシア騎士団に志願した四人だった。  セルシア院の騎士団は家柄ではなく、個人の能力で(もっ)て組織されている。努力次第で取り立てられることもあることから、腕の立つ騎士が揃っていた。世間的には世界で最強の騎士団との評価もされている。  彼らは貴族で、家督を継ぐ立場の者もいたが、王統院の風紀を嫌ってセルシア騎士団へと志願したのだ。そうなると当然、ハーシェルもそこに出入りするようになる。そしてついでに鍛えられたのだ。  いつしか彼らは、まだ役職も与えられていないにもかかわらず、その強さで騎士団の中で有名になった。賊の取り締まりなどにおいてはその功績も(いちじる)しく、市井(しせい)においては彼らの容姿も相俟(あいま)って、絶大なる人気を得るに至っている。  ハーシェルも、実はこっそり(まぎ)れて行っては賊の討伐に参加をし、帰って来ては当時の団長に胸ぐらを掴まれて叱られたものだ。そして今、友のうち二人は騎士団の長官を務め、一人は先日、異例の若さで団長に就任した。
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