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Ⅰ 旅立ち
レア・ミネルウァの政局は、王の独裁の元に置かれている状態と言ってよかった。諫める臣の言葉も一蹴して聞く耳を持たぬ王に、あとは近しい血縁者の諫言を頼みにするばかり。しかしその頼みの綱すらも、立て続けに不明の死を遂げた。
確たる証拠も掴めぬままに、王子たちは父を諫めるべく立ち上がった。ところが虚しくも皇太子はその位を降ろされ、立場を剥奪されてしまう。そしてほかの王子たちも城を追われ、親しくしている貴族や商人の元に身を隠した。
そうした経緯から、城では新たな皇太子擁立のため、さらなる混乱が巻き起こることとなる。
時を同じくして、南方からは「残虐非道の王を成敗するため」と称したフィルセイン公爵が兵を挙げ、王都・シェーンドルンへと進行を始めた。しかしその進軍はすぐに「虐殺軍」と称されるほど残酷なもので、フィルセインが通ったあとは血の川が流れると噂されるようになった。事実、多くの民の命が失われ、生き残った者も自由を奪われた。各地の領主は守りを固めてはいるが、撃破された者、寝返った者も多く、長く安寧の続いた大地の世界はここに、二分されようとしていた。
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