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「内容はなんだ? 何故、口入れ屋を当たらない」
「当たったさ。でもいなかったんだよ、適当なヤツが。特に護衛なんて人手不足で、どこにもいない。王が豹変したって噂は聞いてたが、ここ最近は余計ひどくなったみたいだな。この街にいた腕に覚えのある人間は、みんな貴族が持ってっちまった。なんでも皇太子でさえ殺されるかもしれないって話だ。皇太子と親しくしてた連中も、いつか刺客が差し向けられるんじゃないかと怯えてる。そんな訳で、護衛が欲しけりゃ自分で調達するしかないのさ」
ぺらぺらと一通りのことを説明され、ハーシェルはなるほど、とひとりごちた。城に来た貴族が、目的の王族との面会を待つ詰め所のようなところがあるが、そこは最近、数も風体も異様な人であふれていたことを思い出す。
「で、何をどこまでいくらで送れって?」
「話が早いね! 助かる」
嬉しそうにそういう男に、ハーシェルは肩を竦めた。
「レジエントまで、俺たちの商隊を送り届けて欲しい。一日三万リッツ」
「レジエント……」
西のロムニア男爵が代々治める領地の中心地・レジエント。そこまでの道のりは、約ひと月といったところか。商隊の荷物や動き次第では、もう少しかかるだろう。
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