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末の子供ということもあり、ついついユリゼラの将来を案じてしまう。ユリゼラは動けない訳ではないのだ。幼い頃に比べればずっと元気になっているのだから、ユリゼラが自分で出会いを見つける可能性だってある。
男爵はそう自分に言い聞かせると、立ち止まっていた歩みを進めた。
*◇*◇*◇*
「すっげ~……」
感嘆の声を漏らす商人たちに、ハーシェルは涼しい顔で振り向いた。
「お前……すごいな! めちゃくちゃ強えぇ……!」
「それほどでも。相手が強くなかっただけだ」
ハーシェルは自分の名前をダリと変え、声をかけてきた男・マルヴィンが率いる商隊の護衛として、旅をしていた。
治安は悪く、スリや盗賊にも何度か遭った。そのたびにハーシェルは難なく退治、近くの治安維持部隊へと放り込んだ。一度などは賞金首で、それなりの額も手に入れた。
「まったまた~。これでまた、お前に惚れる女が増える訳だ」
「女性というのは、乱暴者が嫌いなんじゃないのか」
「ダリの場合は別だろうよ。お前には粗野なところがない。どんな理由で旅してるのかは知らねえが、金のある場所で育ったに違いねえ」
マルヴィンの鋭い指摘に、ハーシェルは内心で舌を巻く。
「さてね」
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