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Ad Ignoratium
暗くて、埃っぽい。
軋む木の廊下を延々と歩いていた。
ここはどこだろう。
「わっ」
急に人が出てきた。もう少しでぶつかるところだった。
「あ!ソウカ」
「草間香奈美ね。あだ名で呼ばないで」
同じ高校のクラスメイトだ。
「他の人は?」
「見てない」
この学校のようなところも意味不明だ。
こんな場所は知らない。
建物の中をぐるぐる回っても、ここがおそらく学校だということしかわからなかった。
ただ、机の高さなどからして、小学校というよりは中学か高校だろう。一貫校の可能性もある。そんなディテールの話はこの際どうでもいいのだが。
わけのわからない空間の割には、自由に動き回れるし、学校の外にも出ることができた。
今が夜ということ意外、それほどおかしいところは感じないが。
だが、大通りに出ると一瞬で違和感に気づいた。
コンビニがない。
自動販売機の明かりも見えない。
走っている車もレトロの部類だ。
「草間、これって」
「夢じゃないとしたら、過去か異世界よね」
過去か異世界など、正気の沙汰ではないセリフだ。
「どうやって帰るんだ」
「わかんないけど。ねえ、田鶴見、私たちそもそもなんでここにいるの?何かした?同じ場所にいたとか、同じことをしたとか?最後に見たものは?」
「いっぺんに言うなよ。俺は家庭科室で勉強してて、そのうち寝ちゃってさ。起きたときも机に突っ伏して寝てたよ」
この学校は授業後は部活に使わない部屋を学習教室として解放している。だいたい誰がどこに座るか決まっている。私は地学研究室で勉強している。寝てはいなかったと思うが、記憶が途切れているということは寝たにせよ何にせよ意識はなかったということだ。
喋りながらしばらく歩いていたが、いつも通学している駅がなかった。駅ができる前ということだろうか。
コンビニもないくらいだから人も歩いていない。
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