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先を歩く黒スーツの男に追いつく。黒スーツの男は軽く振り返り、ついてくる男の姿を確認すると口を開いた。
「神崎光太」
黒スーツの男に、自分の名前を呼ばれたことに彼は驚いた様子だった。
不思議なことに、ここに来てから、その名前を聞くまで自分が何者かというのは全く気に留めてなかった。
「なんで俺の名前を?」
「ふふ、名前だけじゃありませんよ。年齢も、趣味も、好きな食べ物も、そして…」
男は一拍、間を置くと立ち止まり光太の方を振り返った。
「どういう風に死んだのかも」
黒スーツの男は微笑んだ表情をしているが、冗談を言ってるようには見えなかった。
光太は記憶を呼び起こしてみる。最後の記憶は、迫り来る大型トラックと大きなクラクションの音。
「そうか…やっぱり死んだのか」
「おや、理解が早いですね」
黒スーツの男はそう言うが、表情から驚きはみられない。常に微笑みの仮面が引っ付いているような顔をみせ、再び歩き始めた。
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