天使との出会い

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光太は顔まで真っ赤にしながら、再び黒スーツについていく。 「じ、地獄だ…」 「天国ですよ」 冗談交じりの返答をする黒スーツを睨めつけながら光太は歩く。 「ところで、あんたは何者なんだよ」 今いる場所や状況は分からないことだらけだが、死後の世界ということは黒スーツもまた、ただの人間ではないのだろう。 「私は天使です」 そう答えた黒スーツの男の目を、光太はじっと見つめる。嘘ではないと思っているが、先程のこともあるので警戒しているようだった。 「神崎光太くん…君は下界に戻ってみたいですか?」 「え?」 天使の言葉に、光太は耳を疑った。 「生き返れるのか?」 「生き返れるって訳じゃないので誤解しないでくださいね」 天使は人差し指を光太に向けて話し始めた。見た目の雰囲気も相まって、光太には悪徳なセミナーの講師に見える。 「あなたも天使になればいいんです」 「どういうこと?」 しかめ面の光太の顔を見て、天使の男は意地悪そうな笑みを向けて光太に近づいていく。 「まず、天使とは、なんなのかを説明しなくてはいけませんね」 銀縁の細いメガネが、磨いた水晶のように光る。初見なら天使ではなく死神に見えるような風貌だ。 「通常、現世で亡くなった人間の魂は天国と地獄に分けられて、地獄にいく魂は業を浄化され、時を経てから次の生を与えられる…つまり転生されます」 光太は聞きなれない単語がでてきて、理解に苦しんだ顔をしている。
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