8人が本棚に入れています
本棚に追加
「つまり、現世の人々を良い方向に導くのが天使の仕事なんです。そのためには人間のフリをして下界で過ごさなければならない。天使になるということは、また別れた人たちに会える可能性があるということです」
光太の頭に家族や幼なじみたちの顔が浮かんだ。当然、会えるなら会いたいと思った。
「ですが、全ての魂が天使になれるというわけではありません。天使採用試験に合格して
天使として現世に戻れるのです。しかも、神崎光太としてではなく、別人としてです」
その天使は、光太に向き直った。その表情は少し悲しさをはらんでるように見えた。
「生き返るわけじゃないっていうのはそういうことか…他人として近くにいるということか」
「そういうことです。さぁ、話を戻しましょう。あなたは天使としてまた家族や友人達と会いたいですか?」
光太は再び、こめかみに親指を当てた。
「天使採用試験…っていうのは?」
正面に立っていた天使は、一気に光太との距離を詰め、顔を近づけた。
「それは…目的地に着いたら話をしましょう」
踵を返し、再び歩きだす天使。
「どこにいくんだよ?」
光太は歩くスピードを上げて、天使についていく。歩みを止めず顔だけ光太のほうに向けた天使は答える。
「この天界で一番偉い人…神様のところですよ」
最初のコメントを投稿しよう!