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さて、“ゲーム”の進行具合はどんな調子であるだろうか。
参加者を集めて“二ヶ月後”。金森と名乗ったその男は、離島の施設を再び訪れていた。
監視員達からの報告は届いているが、それでも企画者としては是非進行状況を見ておきたい。万が一、催眠が解ける人間が一人でもいれば厄介なことになるからだ。
「あ、お疲れ様です、リーダー!」
モニターの前に座っていた監視員の一人が立ち上がり、挨拶をしてきた。
「メールでもご報告しましたが、現在特に問題は起きておりません。順調に、全参加者が“ゲーム”を進行しております」
「気づいた者はいないんだな?」
「いないどころか、全員が“少しでも長くゲームにいたい”と願っているようですね。まあ、現実で容姿にも男にも恵まれなかった連中を厳選したわけですから、少しでも長く幸せな夢を見ていたいと思うのは当然なんですけど」
そりゃそうだろうな、と金森は笑みを浮かべる。ゲームに応募してきた者は多かったが、今回はその中から“友人が少なかったり家族と疎遠気味であったりする”“男性と付き合ったことがない”“容姿レベルが平均を下回る”“乙女ゲームか夢小説に、どっぷりと現在進行形でハマっている”の四つに該当する者を厳選して選んだのである。男に恵まれることなく、望んだ現実を得られていない者達は愛されることに飢えている。そういう者は、あっさりと催眠にかかりやすいのだ。
彼女達は眠った後、すぐにカプセルから出されてそれぞれが用意された部屋に移された。監禁されている設定にしたのは、部屋の外にでなくてもゲームが成立するようにするためだ。彼女達には、訪れる男たちがゲームのイケメン達に見えるように催眠をかけられている。同時に、薬を使って痛みを鈍くし、快感をより感じやすくなるようにも。
そっと、金森が手を伸ばす先。そこにはモニターがあり、一つ一つ参加者名のタグがつけられていた。例えばこの真ん中のモニターは、百田真紗恵三十五歳。参加者の中でも最も太っていて醜く、それでいて夢小説や乙女ゲームへの熱意が人一倍強かった女。彼女は今、自分と同じくらい太ったブサイクな男にのしかかられて、嬉しそうに足を開いて喘いでいる真っ最中だ。
『ああ!ああん!焦らさないでっ……もっと奥、奥う!赤ちゃんの袋まで、いっぱい突いてぇ!』
――元処女かよ、これが。ブスは喘ぎ声も品がなくてブスだな。
ちなみに、男の方は“同意の上で”催眠をかけられていて、抱いている女が自分好みの美女に見えているはずである。
これが自分達のビジネスだった。好きなだけ、好みの女を抱くことができると男達に持ちかけ、大金を貰うのと引き換えにセッティングをする。男達にはキャラになりきる多少の演技指導はしているが、それだけだ。ゲームのヒロインになりきっている彼女達は、自分達がゲームの世界でイケメンに溺愛されているとしか思っていないから抵抗しない。むしろ望んで、男達に抱かれて気持ちよく喘ぎ続けるのだ。
さらに、彼女達が産んだ子供はそのまま海外へと売り飛ばされるシステムである。自分達は最終的に、そうやって膨大な利益を産むことができるのだ。
――精々楽しんでくれよ。地獄の中の天国ってやつを。でもって、山ほど子供産んで、売らせてくれや。
金森はモニターの前で、馬鹿な者達を嘲笑う。
知らぬが仏とはまさにこのことだ、と思いながら。
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