【本編・ちょっと鈍感な彼女SIDE】朝、目が覚めたら知らない部屋のベッドのうえでした

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 わたしなんか座ってるだけで場違い感満載でびくびくしてんのに。行きつけの店ってやつか。課長は確か独身、てか指輪はしていない。課長職にもなると、こういう高そうな店に、ひとりでも来れたりするのかな…… 「ん。どうした」  まともに見つめられ、思わず視線を外してわたしは答える。「やー課長、なんか今日いろいろとくるくるミラクルです……」 「どーゆー意味?」 「えっと課長とわたしあんま喋ったことないじゃないですか」 「仕事んとき喋ってるじゃないか」 「なんか課長キャラ違いすぎてぶっちゃけどう接していいか困ってるんです……」 「外じゃおれいつもこんな感じよ? つかあのキャラ、疲れっし」  キャラなのかよ!?  ……と叫んで突っ込みたかったが自重した。「いろいろ大変なんすね、課長職ともなると」 「まーほかのやつらと同じよーにわいわいやれねーのは辛いな。仕方ねーけど。……桐島こそなんかキャラちげーぞ。猫被ってるだろおまえ」 「……猫ってか、一度酔いつぶれて限界を見てそれ以降限界値以下で動くよう心がけてんです……」  てか課長なんでわたしを呼び捨て。  まあいいや、と思ってたら、顔を覗き込まれる。  近くで見ると整っていて本当に心臓に悪い。「酒、つええの、桐島?」  わたしは下を向いて頭を振り、 「話聞いてました? 得意ではないです、でも嫌いになれないんです」 「恋みたいだな。……まー帰りのタクシー代出してやんから気にすんな。とにかく飲め」  気になる台詞を吐かれたものの。  ここで、カウンターにグラスが二つ置かれ――シャンパングラスみたいな縦に長いやつ、それにクラッシュされた氷が入ってる、そこに。 「えっ」  なみなみと日本酒が注がれる。て、えええ!? 日本酒に氷!?  びっくりしてわたしが課長を見ると、「これがうめえんだよなあ」と満足気につぶやく。  飲んだことあるんだ。  そりゃそうね、わたし初めてでめっちゃびっくりしてます。  いったいどんな味がするんだろ。
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