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彼女は、どうやらおれが面接を受ける会社の社員のようだ。ドアの前に立つと、ためらいなく扉を引く。胸の膨らみからしてどうやらDはありそうだとおれの目はしっかり確認していた。
と、おれに気づく。
開いて、持ってくれていた。おれを先に入れてくれる。「あ。すいません」とおれは会釈した。すると微笑み返す。童顔なのにその微笑の仕方が妙に大人っぽくって、どきっとした。
彼女は、おれが部屋に入るのを確かめ、自分も入ると、おれの目を見て言う。
「面接にお越しの三田遼一さんですね。お待ちしておりました」
そして、ゆっくりと、一礼をする。――驚いた。
おれの顔に名前でも書いてある? なわけねえだろ。
「ご案内します」
もう一度微笑むと、彼女は、きびきびとした仕草でおれをエスコートする。
狐につままれた感じだった。……彼女の手にネイルは施されていない。服装と化粧の感じからして、受付嬢ではなさそう……とすると人事、それとも秘書?
こんな秘書いたらおれ相当幸せ。
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