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9,お茶会で
マリアンヌ様のお住みになっている離宮に行くと、要塞みたいな王の城とは違ってたくさんの花の咲いた庭と白い壁の小さな可愛らしいお城だった。
色々な花が植えられた優雅な庭に案内された。ここだけレオパレス国とは思えない程、山に無い花々が植えられ花を咲かせている。
「ライラ姫様、ようこそ私の城へ。こちらへ、いらして」
マリアンヌ様は笑顔で迎えて下さった。
テーブルにはレギン王とマリアンヌ様、あともう一人初めて会う小柄な女性が座っていた。先にレギン王に挨拶をしようと顔を見たら、もの凄く不機嫌な顔をしている。
「レギン王様、お早う御座います」礼をし、頭を下げた。返事をしばらく待った。
「顔を上げろ。……よく眠れたか?」と、レギン王は顔は不機嫌だがライラ姫を気遣った。
「お気遣いありがとう御座います。温泉が気持ちよくて気に入りました」
「そうか。良かった」
一瞬だけ、フッ……とライラに笑いかけたがまた不機嫌な顔になった。
「マリアンヌ様、お招きありがとう御座います」
ライラはマリアンヌ様の方へ向き合いペコリと頭を下げた。
……隣の女性はどなたかしら?
そう思っていたら、マリアンヌ様が隣に座っている女性を紹介してくれた。
「こちらの女性は私のめいっ子なの。一ヶ月前から滞在しているの」
小柄な女性を見ると、明るい色のふわふわの金髪にくりっとした大きな緑色の瞳。面影がマリアンヌ様にとても似ている。リボンとレースのついた可愛らしいドレスがよく似合う女性だ。
「リアンです。初めまして、ライラ姫様」
隙の無い綺麗な貴族の礼をした。
「実はリアンはね、レギンのお嫁さんになって欲しかったの」
うふふ、とマリアンヌ様は微笑みながら話した。
「母上!」
レギン王は制止するように怒鳴った。
「まあ、我が息子ながら怖いわ。あと一ヶ月あるじゃない」
ねえ?、と微笑みかけられた。
『どういう事だ?』
ライラ姫はどう判断したらよいか迷った。
「ああ、ごめんなさいライラ姫様。お座りになって」
マリアンヌ様が座るようにを勧めた。
クスッ、とリアンさんが笑った。
「は、はい。失礼いたします」
ライラ姫は椅子に座ろうとした時……。
バンッッ!
「「キャア!」」
レギン王がテーブルを両手で叩いたのに驚いて、マリアンヌ様とリアンさんが叫んだ。
「母上!ライラ姫に失礼だ。お茶会は中止だ!」
レギン王はライラの腕を掴み、その場から早足で歩き出した。
「あ、レギン王様!お待ちになって!」
リアンさんが呼び止めたが構わず早足で進んだ。
ライラ姫はレギン王に腕を掴まれたまま、お茶会の場から退出した。
「胸クソ悪い!」
チッ、と舌打ちをしたまま不機嫌な顔で馬小屋についた。ライラの腕を掴んだままなのに気がつき、手を離した。
「すまなかった」
ライラは急に謝罪をされて戸惑った。
「いえ、……」
ふう……と深いため息をはき、
「馬は平気か?」と聞いてきた。
「大好きです」
馬は好きなので素直に答えた。見せてくれるのだろうか?
「ならば、ライラ姫。ちょっと付き合え」とレギン王はライラ姫に言った。
何も話しかけてこなかったので、無言でレギン王に付いていく。レギン王は気にしない様子でライラを連れて歩いて行った。少し歩いて行くと城の馬小屋が見えてきた。
「走りに行く」
馬番に一言、声をかけると馬番は慣れた様子で馬を歩かせて手綱を王に渡した。
「乗れるな?」
乗れるか?ではなく、乗れるな?とライラに言う。ドレス着てますけど?
考えているうちに、レギン王はヒラリと馬に乗った。
「前に乗れ」
そう言って何か呪文を唱えた。
「わ、」
その時、少し体が浮き上がった。びっくりしていると、レギン王は私を抱きかかえて前にに乗せた。呆気にとられていると、何も言わずに走り出した。
「!」
これは魔法?いや、違うか?……何だろう。
ライラ姫は馬に乗るのは慣れている。
慣れているがレギン王の走りは荒っぽく、道は険しい山道だ。
山道をスゴイ早さで駆け下りている。
「くっ……」
馬に慣れているとはいえ、こんな山道を駆け下りることはしたことがない。舌を噛まないように奥歯を食いしばる。
顔は見えないがレギン王は巧みな手綱裁きで駆け下りている。平気なようだ。手綱を持つ腕は太く筋肉が盛り上がっている。かなり鍛えているようだ。
後ろから馬を操るレギン王はライラの体をすっぽり包み込む大きさだ。ライラは男性とこんなに密接したことはなかったので少し戸惑った。
険しい山道を駆け下りた所に、川があった。ふと、見ると小さな家がある。
「……あそこで休憩しよう。王族の休憩所だ」
馬もさすがに疲れているようだった。休ませてあげたい。私もちょっと疲れた。
「……はい」
山道を降りきって平坦な川沿いの道をゆっくり馬を歩かせた。
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