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4,山を登り、城へ
エスパルト国から国境を越えレオパレル国へ入国する。王の元へは山を登らなくてはならない。皆、準備を進めていた。
朝からマギーはあわただしく動き回り、私の支度をいつも以上に念入りに、時間をかけていた。
「さあ、姫様。準備が出来ましたよ!」
そう言ってマギーは手鏡を渡してきた。
「ありがとう?」
手鏡を覗いて見ると……。
「え?私?」
薄化粧だが上品に、ほんのりピンク色をポイントにした、可愛らしい顔をした自分が鏡の中にいた。
「ライラ姫様は素材は良いんですから!レオパレル国に行きましたら口紅ぐらいはつけて下さいね」
「……はい」
「そしてベールをつけてっと。こちらの鏡を見てください」
全身を映す鏡を見ると、可憐な刺繍のされたうっすら透けるベールを被って、体にぴったりとした白いドレスの裾に美しい刺繍がされた上品な衣装を着こなしていた女性が映っていた。
「驚いた。私でも女性に見える」
「ライラ姫様は間違いなく女性です!このドレスはメイド総力あげてお作り致しました」
ペコリとお辞儀をした。
「山を登るということで少し裾を短く、中にぴったりとした乗馬用のズボンを履きましょう」
「用意がいいね」マギーのメイドのスキルには驚く。
「あと……ライラ姫様。将軍様とも話をしたのですが……」
「何?」
鏡越しにマギーを見る。
「ライラ様が副将軍だった事は『秘密(トップシークレット)』に、と」
「だろうね……。直接的な戦闘はなかったけど、侵略しようとした国の副将軍が内部に入るとなれば大騒ぎになる」
ククククッと笑う。
「笑っている場合じゃないですよ、ライラ姫様」
「嘘をつくのは好きじゃない。王の信頼を得たら話す事にする」
「そうした方がよろしいとは、思いますが……」
「それと、言葉使いもお気をつけ下さいませ!」
「わかりましたわ。マギー」
にっこり笑いながらマギーを見た。
大丈夫かしら……。という顔をしているマギーだった。
───────
レオパレル国を目指し山を登った一行は疲労を感じていた。
「ライラ姫様~こんなに険しい山とは聞いてなかったです~」
馬に乗っているが、ゼイゼイしながら私の前に座っているマギーは言った。標高が思ったより高く空気が薄く感じる。
回りを見ても皆、疲れている。
「皆!ここで一度休憩しよう!」
ライラ姫は皆に声をかけた。
「は!」
護衛達やメイド(護衛も兼ねている)達はライラの命令にありがたく従った。
「なるほど。この山の険しさなら攻められないな」
強国なのがわかった。
それに幼い頃からこの険しい山が遊び場だったとしたら、相当鍛えられるだろう……と、ライラは姫らしからぬ事を考えていた。
「ライラ姫様、大丈夫でしょうか?」
マギーはライラ姫を気遣い聞いた。
「マギーの方が大丈夫じゃない」
切り株に腰かけていたマギーの首筋に冷たいタオルをあてる。
「ああ……冷たくて気持ちが良いです。姫様……」
ふう、と一息つく。
マギーもメイド兼護衛で鍛えているはずだが疲れている。
「あと少しのはず。もう少し休んで行きましょう」
ライラ姫は皆の様子を見、そう伝えた。
王の居城がある山頂に着いたのは日も傾きかけた頃だった。
「この険しい山をよく登って来られた。入られよ!」
見上げるほど大きな岩を削り作った狭い入り口。そこを抜けると目の前に大きな城があった。城というより……、城塞だな。なかなか落とせない作りになっている。ライラは思った。
案内をしているレオパレル国の男は、やはり上半身にベストの様な布を着て下はズボンを履いた服装をしている。
「守護隊副隊長のミノンだ。護衛の男達の控え室に案内をする。女性達の控え室には下働きの長をしている妹のカノンが案内する」
「よろしくお願いします」
マギーが代表して答えた。
「私は姫様付きのメイドのマギーです。姫様に御用がありましたら私までお願い致します」
「「よろしく」」兄妹と言った二人は、にこやかに笑った。
「夜に歓迎の宴を開きます。それまでにゆっくりくつろいで下さいませ。控え室には温泉がありますのでお使いください。お時間になりましたらお呼びします。ではご案内致します」と下働き長のカノンが説明をし、女性達の控え室に向かう。
城を見渡すと、岩をくりぬいて作られていてかなり頑丈な作りになっている。
「メイドさま達の控え室になります」
8人くらいが泊まれる部屋になっている。
「向かいの部屋がメイド……、私達の言葉で【下働き達】の部屋になっていますのでわからない事がありましたらお聞き下さいね」
通路を挟んだ向かい通しの部屋だ。「一時間後、打ち合わせします」とマギーは言い、メイド達は「わかりました」と言い部屋に入って行った。
ライラ姫とマギーの二人になり、カノンは歩きながら説明をしてくれた。
「一階東側は王を守る、守護隊……つまり騎士とか兵士ですね。その者の居住区になります。西側は下働き……メイド、女性の住む居住区になります。二階は王の間や、宴の間、王族の居住区は三階になります。三階のお部屋にご案内致します」
「そちらのお部屋にも温泉がありますのでお使いくださいね」
「ありがたく使わせて頂きます」
マギーはにっこり笑って答えた。
豪華ではないが質の良い家具が揃った部屋に案内された。
「では二時間ほど後でお迎えに参ります」と言い、部屋から出ようとしたカノンだったがライラ姫の方に向き、
「……レオパレル国の者は気性が荒いですが、根は優しい者が多いです。王を一番に考え、慕っています。余計な一言かもしれませんが、どうか王を支えて下さいませ。お願いしますライラ姫様!」
真剣な表情でライラ姫へ懇願した。
マギーは何か話そうとしたがライラはそれをとめて
「わかりました。ありがとう、カノン」とライラは話した。
それを聞いたカノンはポロリと涙を流し、
「ありがとうございます。ありがとうございます」と何度も言って戻って行った。
「カノンさんが気になりますが、さっそく温泉に入って汗を流しましょう!」
「……そうだね」
何か事情がありそうだな、とライラは思った。
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