7,宴の終わりに

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7,宴の終わりに

   ライラは思い出した。 国境付近で、怪我をし助けを求めた若い男。 私の国の矢じりではなかった。国ごとに矢じりの作りが違う。 たしか、あの矢じりは……。 「余計な事は思い出すな」 ゾッとするような低い声だった。  ふいに、ライラ姫はレギンに右手も握られた。 レギン王はライラ姫を引き寄せ小声で 「あの時は世話になったが、命が惜しかったら余計な事はするな」と言い、睨みつけた。 高貴な王族の姫君ならば、至近距離での王の睨みに震えただろう。 しかし、ライラ姫は戦場で戦ってきた騎士。 見つめ返し逆に聞いた。 「命が惜しかったら、とは命が狙われるような事柄なのか?」 まわりから見れば王とライラ姫が近づき仲睦まじい雰囲気に見えた。 ビクリッとレギン王は体が動いた。 ギリリと歯を食いしばり右手を痛いぐらい握りしめた。 「来た早々死にたくなければ、『しらぬ』で通せ!」 まわりを気にし、小声でライラ姫に忠告した。 「王の仰せの通りに」 ワザと声を上げふわりと微笑んだ。 ちっ、と舌打ちをしライラ姫の前から去って行った。 『ふむ……。意外と王は私を案じてくれているようだな。あの時の矢じりはこの国の物だった。……と言うことはあの時は暗殺される所だったのか?』 王の去った方を見つめてライラ姫は考えていた。 正面を向き、部下達を見渡す。 『まあ、王族ならば常に狙われる。そのうち詳しくわかるだろう』とライラ姫はさほど気にせず、隣にいる義理母の元へ行き退出の許しを得た。 「ここは山の頂上付近。空気が薄いから体が慣れるまで一ヶ月位はかかるの。体調に気をつけて過ごしてね」と別れ際に気を使われた。 「だから結婚式が一ヶ月後なのですね」と、マギーは言った。 「その様……ですわね」 ライラ姫はまわりに気をつけながら与えられた部屋に戻った。
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