おしえて

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「ねぇ  教えて」 長い髪を綺麗に結わえ、純白のドレスを着た彼女は問いかけた。 「何を?」 「どうして私の付き添いを選んだの?」 子猫のようなイタズラな目で俺を見つめる彼女は、愛しい以外の何物でもなかった。 「・・・美味しかったから・・・」 「え?」 「砂糖菓子・・・久しぶりに美味しいものだったから・・・」 「それだけ?」 彼女はクスッと笑った。 厳格な家庭で生を受け、他者との交流を避け続けるよう教育された俺は、いつの間にか、攻め入ることができない壁を築き、誰からも嫌われることを良しとした。 『これ食べる?』 『・・・勤務中の飲食は禁止だ』 『フフッ・・・』 『・・・何がおかしい』 『ここの人たちってみんな同じことを言うのね。躾の良いチンチラみたい。』 『・・・バカにするな』 『気が向いたらで良いわ。お上の人には内緒よ♡』 そういって、銀箔の包みを無理やり握らせた。 ブロンドヘアの彼女は、何が楽しいのかずっと笑っていた。 「だってあなた顔色悪そうで、いつ死んじゃうか分からなかったんだもの。」 「余計なお世話だ。」 「あら、相変わらず愛想がないことっ」 彼女は少しムッとした表情で赤い唇を尖らせた。そのルージュに、何度触れたいと思ったか・・・口をつけなかった菓子が今では悔やまれる。 「・・・どうして俺を選んだ?」 「私?」 彼女は遠くを仰ぐように見つめて目を閉じる。 「あなたの話が、すごく面白かったからかな。」 「・・・何だそれ」 嫌な思い出を蘇らせぬよう吐き捨てる。 「だって本当に面白かったんですもの!」 彼女はあの頃のように、目を輝かせた。 『退屈なの。何か話して頂戴。』 『・・・むやみに口を聞くな。位が異なる者同士の対話は禁じられている。』 『あなたっていつも禁止ばかりね。いーじゃない。ほんの羽伸ばしだと思って。』 『・・・』 俺は辛うじて覚えていた逸話を手短に話した。強弱も抑揚もなく  淡々と語った。 彼女はベッドにうつ伏せになって聞いていた。 『それで?』『どうして?』『なに?』矢継ぎ早の質問に、俺は機械のごとく答えた。 いつもより言葉を流暢に語ることができた理由を、あの日は知る由もなかった。
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