苦くて、甘くて、すっぱくて

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友達と喧嘩した。足取りは重く、後ろ髪を引かれるような思いで校門を飛び出した。心無しか空もどんよりと重く曇って見える。 どこか現実離れした感覚と共に帰っている時に、゛それ゛は目に入った。 慣れ親しんだ登校道に見慣れない建物。レンガ造りの童話に出てきそうな佇まいで看板には金色の文字で「caramella」と書かれている。 周りが田んぼだらけのこの地域にしてはオシャレなお店だ。 普段なら1人で初めてのお店なんて入らない。初めてのお店って何だか怖いから。 けれど今日はこのどうしようもなく靄のかかった気分を変えたくてシルバーのドアノブに手をかけた。 ──チリンチリン 「いらっしゃいませ」 笑顔の男性と目が合う。20歳くらいだろうか、どこか見覚えのある顔つきをしている。 店内もやっぱりオシャレで、ショーケースには色とりどりのキャンディがきちんと整列していた。 「ご注文は如何なさいますか?」 彼の声にハッとする。急いでメニューに目を落とした。 「あ、じゃあカモミールティーを1つ」 「キャンディは何に致しますか?」 「キャンディ?あ、えっとオススメをもらえますか?」 「かしこまりました、こちらの待ち札を持ってお好きな席でおかけください」
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