苦くて、甘くて、すっぱくて

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「え、お金はどうすればいいんですか?」 「後で頂戴致します」 「わかりました」 そう言ってこれまたお洒落な待ち札を受け取り窓際の隅の席へと腰を下ろす。 あまり広くはない店内だが装飾が凝っていて雰囲気のいいお店だ。だけど客は私1人しか居ない。こんなに素敵なお店なのに、と思いつつスマホをいじり始めた。 そして数分がたった頃 「お待たせ致しました。こちらカモミールティーと梅雨空のキャンディになります」 そう言って目の前に置かれたのは小皿に乗った淡い紫と碧のグラデーションのかかったキャンディ。あまりにも綺麗な色に目を奪われてしまう。 「梅雨空のキャンディって面白い名前ですね」 私がぽつりとつぶやくと店長は笑った。 「梅雨空というのは名前の通り梅雨の時期の雨空の事を指します。どこかお客様の表情が暗く感じられたのでこちらのキャンディを選ばせて頂きました」 その言葉に私は顔を上げた。 「つかぬ事をお聞きしますが、何かあったんですか?」
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