苦くて、甘くて、すっぱくて

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ふわりと、彼女の甘い匂いが私を包み込んだ。柔らかな体温と耳元の呼吸音がどうしようもなく私を安心させる。 そして私は彼女の胸の中でひとしきり泣きわめいた。 「……もう大丈夫そう?」 「うん、ありがとう」 あれから私は5分くらい泣いていた。その間、彩希は私をずっと抱きしめていてくれた。 「泣いたせいで少し頭痛いかも」 「そりゃあ、あれだけ号泣すればねぇ」 清々しい笑顔を浮かべる彩希。そんな彼女の顔を見ていて思い出した、あの飴のこと。 「彩希、手だして」 「ん?」 少し戸惑ったような表情をしながらも手が出される。その手を包み込むようにして飴を渡した。 「え、なにこれ」 「キャンディ」 「……仲直りのしるし的な?」 「うん」 「仲直りしてキャンディ渡すなんて小さい子みたいだね」 ケラケラと愉快そうに彼女は笑う。 「子供っぽくて悪かったね」 拗ねたように口を尖らせて言えば 「ごめんごめんって!」 全く反省の色が見えない謝罪が返ってくる。 「にしても、この飴すごく綺麗な色してるね」 「それ、〖 夕晴れのキャンディ〗っていうの。昨日見つけたお店で貰った」 「お店?」 「うん、caramellaってお店。すごくお洒落な所だったよ」 そう言うと彩希が目の色を変えて飛びついてきた。 「え、そこさ店主若い人じゃなかった?20代くらいの男の人」 「そうだったよ、行ったことあるの?」 彩希がここまで人の話に食いついてくるなんて珍しくてキョトンとしてしまう。 彼女は自分の手のひらにある飴と私の顔を交互に見て、かすかに笑った。
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