雨空にシャンソン

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 お母様は、決して自由な人ではありません。15歳で会った事もないお父様と結婚し厳しい姑に苦しめられてきたのですから。  あの自由だと思っているシャンソンの女は、本当は自由ではなかったのかもしれません。この世の中、異国の人と添い遂げる代償は想像できません。  お母様にはお母様の進むべき道があり、シャンソンの女にも進むべき道があったという話なのでしょう。そして、お姉さまにもお姉さまの、ユリエさんにもユリエさんの、私にも私の道があるのです。なるようにしかならない道が。  きっと同じなのです。どこに行こうが何を選ぼうが、心が自由でなければ自由ではないのです。好きなものを好きだと思っていいのです。心までは縛ることは出来ないのだから。  はっきりと心の中が解決したわけではありません。まだ黒い蛇の目の傘が重たく感じます。それでも、背中を押された気持ちになりました。止みそうにない雨道の中に一歩踏み入れる勇気のようなものを感じています。  私は紅い蛇の目の傘をぱっと咲かせました。 《了》
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